無指向性アンテナ(等方性)の電力を交流理論で-基準アンテナの設定-

まず、基準となるアンテナの空間における電力を求めます。


先に示したカージオイド特性からアンテナの指向性利得を計算するためには、
比較するアンテナを定義しておく必要があります。


指向性利得というのは、無指向性アンテナ
(現実には、無指向性アンテナは、実在しない。)
との最大ビーム方向での電力比の比較をいいます。

というのは、アンテナは、増幅作用があるわけではなく、
アンテナ全体の利得は、常に1以下です。

指向性があるため、ある一定方向だけに電力が集中するという意味です。


(アンテナ利得の参考)
よくある勘違いは、
高調波で乗る1/2λ波長より長いアンテナには、1/2λDPより指向性利得があります。

この利得は、ダイポールのようにはっきりとした主ローブに対してではなく、
四方八方にばらけたローブのごく狭い方向のみに適用されます。

従って、利得が働く方向は、かなり限られた方向でしかも分散しています。

それでは、アンテナが高利得であるとは、言い難い動作となります。


(事例 7MHzDPを21MHzで利用 又は、3/4λスローパー等)


さて、話も戻し、ここで、電力とは、
交流理論から 当然、
P=E×I 
ですから、 

これに I=E/R
( この場合Rは、空間の電波インピーダンスとなる。)
を適用して

 P=E^2(Eの2乗の意味)/R

すなわち、電界強度Eの2乗と比例関係となることを意味します。

但し、このままでは空間電波の電力計算に適用できません。


画像


図面1は、
実際にあり得ない無指向性アンテナ
(等方性=アイソロピック)
を原点0に置いた場合の
原点から距離rだけ離れた球表面全体の電力を考えます。

図面は、円ですが、立体的な球であると見て下さい。

ここで、まずピンク色をつけた部分の表面積を求めます。

Δθは、極小さい角度という意味で、普通の角度と同じです。

Δ円弧の長さ=r・Δθ

これは、ラジアンの定義そのままで
角度(ラジアン)=円弧/半径

ゆえに Δθ=円弧/r

∴ 円弧=r・Δθ

また、球の表面の角度θ位置での球の円周を求めると
x軸からの距離=r・sinθが半径となる円周となり

円周長=2π(rsinθ)

これとΔ円弧と掛けると球の表面の一部の面積が求まります。

Δ球表面積=2π・r^2・sinθ・Δθ

この微小面積を0からπまで、全て足し込むことを積分
(この場合、範囲が0からπと定まっているという意味で、定積分) 
すると呼びます。

これを記号で書くと ∫ (インテグラル) 記号となります。

この記号の上下についているの数値が、積分する区間範囲です。
(ここでは、0とπ)

高校2年か3年あたりの数学で、この定積分は習っているはずですが、
詳しくは、ネット検索して下さい。
                    π 
よって 円の表面積=2π(r^2)∫sinθdθ ・・ ( A )
                    0

 ※2πは、定数で、半径rも角度に関係がない定数のため、
  ∫記号の中からそのまま出せます。


また、一方、電磁気や交流理論の概念を拡大して考えますと

電界強度Eでは、距離r離れると、その距離に反比例しますが、
原点0であった電界強度E0から見ると

 E = E0/4πr

電力Pとなると 距離の2乗に反比例することになります。
同様に原点0で、アンテナに注入した電力P0からは、 

 P = P0/4πr^2

これは、すなわち、割り算の定数項は、この球全体の表面積を表しています。

       π                             π  
球表面積=∫ 2π rsinθ・ rdθ =2π・-r^2×{cosθ}
       0                              0  

ここで  cosπ=-1 cos0=1 から

球の表面積=4π(r^2) を得ます。 ()は、以降省略

このため、

 この球面上の電力密度{w/㎡}=P0/4πr^2 

これとA式と組み合わせて

球表面上を外側へ出て行く全電力Pは、

P=電力密度{w/㎡}×球の表面積{㎡}


                     π
 =(P0/4πr^2)×2π(r^2)∫sinθdθ
                     0
         π
 =(P0/2)∫sinθdθ
         0
         π
 =(P0/2)∫1・sinθdθ ・・・(B)
         0
を得ます。

積分式を解いてやれば 

             π
 積分式={-cosθ}=-{(-1)-1}=2
             0

従って 式Bは、結局 P=Po となります。 


これが、等方性アンテナが放射する電力です。

積分内の1は、このアンテナの電力指向特性S(θ)=1 の時だからです。



このゲインが1倍と考えて、今後は、等方性円の半径を1で表現していきます。



次に測定したいアンテナの電力指向図から求まる関数(曲線を描く)S(θ)を使って、表現すると
(B)式の積分内にS(θ)が入ります。

よって、被測定アンテナの球表面上における電力Paは、

 Pa=(P0/2)∫S(θ)・sinθdθ  ・・・(c)

で求めることができます。

この場合、指向性があるために球表面電力は、等方性アンテナに較べると減少します。
この減少分の逆数が、アンテナのゲインとなって現れます。

すなわち、ここでは、ゲインGi=1/(Pa/P)となって、

結局 Gi=P/Paです。


ここで、S(θ)の積分結果から得た倍数を電力指向特性図に掛けて作図を行うと

被測定アンテナの最大指向特性を有する方向のグラフと大きさ1の等方円と比較すれば

 被測定アンテナ電力/等方性アンテナ電力=ゲインGiとなって、先の計算と一致します。


但し、今回は、計算式から直接求めることを主眼として、説明しています。




※黄色マーカ部を修正・追加して補正 2009/10/27


このゲインを 10×logGi としたのが、皆さんお馴染みの dBi 表記のゲインです。

これを、アンテナの教科書では、絶対利得と表現します。

事例 ゲイン2倍となるアンテナの場合 10log2=10×0.3=3 dBi

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